夏はさまざまなイメージが持たれる季節。中でも夏祭りは多くの方が持つイメージのひとつ。 夏祭りはさまざまな地域で開催され、それぞれ違った特色があります。今回は、夏祭りが好きな方に向けて、東日本でおすすめの夏祭りをご紹介します。
目次
函館港まつりは、函館港の開港を記念して開催される祭りです。開港77周年となる昭和10年から始まったこの祭りは、函館で最大のイベントのひとつとなっています。平成7年からは開催日が8月1日~5日までの5日間に固定され、その間にさまざまなイベントが開催されます。
函館港まつりには、「道新花火大会」と「ワッショイはこだて」という2つの大きなイベントがあります。道新花火大会は北海道新聞が主催する花火大会で、これまでに60回以上開催されています。全部で5部構成になっており、スターマインや大玉花火、仕掛け花火などが函館港から打ち上げられます。
ワッショイはこだては、市民参加型のイベントです。各参加団体がそれぞれ衣装をまとい、指定されたコースを踊りながら練り歩きます。神輿(みこし)や山車(だし)など、見どころは盛りだくさんです。
青森ねぶた祭は、毎年200万人以上の観光客が訪れる日本屈指の夏祭りです。「ねぶた」「ねぷた」と名のつく祭りはいくつかあり、その中でも青森市で行われる「青森ねぶた祭」は最も有名で、国の重要無形民俗文化財に指定されています。仙台七夕まつり、秋田竿燈まつりと並んで、東北三大祭りのひとつに数えられています。
青森ねぶた祭は、毎年8月2日~7日までの6日間にわたって開催されます。1日目と2日目は子どもねぶたと大型ねぶたの運行、3日目から5日目までは大型ねぶたの運行、6日目はねぶたの海上運行と、全日で数多くのねぶたが運行します。巨大なねぶたが列をなして進む様子は、まさに圧巻の一言です。
青森ねぶた祭は見るだけでなく、ハネトと呼ばれる踊り手として参加することもできます。正装していれば誰でも参加できるので、興味がある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。正装は市販されている他、一式レンタルすることもできます。
秋田竿燈(かんとう)まつりは、秋田県秋田市で開催される祭りです。毎年8月3日から6日までの4日間にわたって開催され、合わせて100万人を超える観光客が訪れます。江戸時代から続く由緒ある祭りで、重要無形民俗文化財に指定されている他、東北三大祭りや日本三大提灯祭りのひとつに数えられています。正式名称は秋田竿燈まつりですが、縮めて竿燈と呼ばれることもあります。
秋田竿燈まつりの原型は、笹や合歓木(ねむのき)に願いごとを書いた短冊を下げ、それを持ちながら練り歩いた後に川に流すという「眠り流し」だとされています。そのため、かつては眠り流しが訛(なま)った「ねぶり流し」と呼ばれていました。竿燈まつりで使う竿燈の大きさはさまざまで、最も大きいもので長さ12m、重さ50kgになります。これらの竿燈を手や額、肩などに乗せてバランスを取り、その技を競います。竿燈を操る技だけでなく、職人の手作業で作られた提灯や、囃子も見どころのひとつです。
仙台七夕まつりは、宮城県仙台市で開催される祭りです。毎年8月6日から8日にかけての3日間にわたって開催され、200万人もの観光客が訪れます。旧仙台藩にあたる地域では七夕に因んだ祭りが数多く開催されていて、一説では仙台藩の初代藩主・伊達政宗が文化向上の目的で七夕を奨励したことが始まりだといわれています。仙台七夕まつりはそうした七夕に因んだ祭りの中で最も規模が大きく、東北三大祭りのひとつに数えられています。
仙台七夕まつりでは、一番町や中央通りなどのアーケード街、仙台駅周辺などを中心に大規模な飾り付けがなされます。商店街や各店舗、各家庭でも個別の飾り付けがされ、仙台市内全体が七夕一色になります。期間中には仙台市内の各所でさまざまなイベントも開催され、まさに仙台市全体がお祭り会場となります。
東北三大祭りは、東北地方で開催される著名な3つの夏祭りをまとめた総称です。
青森ねぶた祭、仙台七夕まつり、秋田竿燈まつりの3つを指し、「いずれも七夕に関する祭りである」「戦前から祭りとして確立されている」「県庁所在地で開催される」といった共通点があります。また、各祭りの型や方法が日本各地に広がっているということも特徴です。
山形県で開催される山形花笠祭りを加えて「東北四大祭り」、四大に岩手県の盛岡さんさ踊りあるいは福島県の郡山うねめまつりを加えて「東北五大祭り」、五大に福島県の相馬野馬追あるいは岩手県のみちのく芸能まつりを加えて「東北六大祭り」と称することもあります。
青森県からはもうひとつ、八戸三社大祭もおすすめです。八戸三社大祭は八戸市で開催されている夏祭りで、毎年7月31日~8月4日までの5日間開催されます。300年の伝統がある祭りで、国の重要無形民俗文化財に指定されています。2016年には、ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。毎年100万人以上の観光客が訪れる人気の祭りです。
八戸三社大祭の最大の見どころは、おがみ神社、長者山新羅神社、神明宮の3つの神社の神輿行列と、神話などを題材にして製作された27台の山車の合同運行です。荘厳な神輿行列と華やかな山車の共演、法霊神楽(ほうりょうかぐら)や虎舞(とらまい)などの郷土芸能、伝統的な楽器を使った囃子(はやし)など、歴史や伝統が深く感じられます。初日と最終日には山車の一斉展示が行われるので、迫力のある山車をじっくりと観賞できます。
佐原の大祭は、千葉県香取市で夏と秋の2回開催される祭りです。300年の歴史がある関東三大山車祭りのひとつで、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。夏祭りは7月10日以降の金曜・土曜・日曜の3日間で行われます。
佐原の大祭の夏祭りは、八坂神社の祭礼となっています。本宿地区を10台の山車が運行され、曳き廻しの見せ場である曲曳き(きょくびき)も行われます。前輪を軸にして時計回りに回転させる「のの字廻し」や楕円を描くようにして引き回す「こばん廻し」、緩急をつけて直線的に往復する「そろばん曳き」など、さまざまな曳き方があります。
日本三大囃子のひとつに数えられる「佐原囃子」に乗せられ、伝統的建造物群保存地区に指定されている地域を山車が運行する姿は、江戸時代の情景を思わせる風情たっぷりな光景です。
山あげ祭は、栃木県那須烏山市で開催される夏祭りで、国の重要無形民俗文化財やユネスコ無形文化遺産に指定されている「烏山の山あげ行事」の一環で行われる祭りです。山あげ祭の起源は400年以上前にさかのぼります。毎年7月の第4土曜日を含む金曜・土曜・日曜の3日間で開催されます。
山あげ祭の見どころは、野外劇と「ぶんぬき」です。山あげ祭では、山水画を描いた「はかり山」を背景に野外歌舞伎が行われます。舞台装置はすべて人力で動かされ、はかり山を持ち上げる様子から山あげ祭と呼ばれています。舞台が行われる場所はいくつかあり、ひとつの演目が終わると次の舞台に移動します。野外歌舞伎の演目はもちろん、準備や撤収の手際のよさも見どころのひとつです。
ぶんぬきは、屋台どうしがお囃子のリズムや大きさ、力強さ、持続力などの競う行事です。八雲神社前で行われる30分間のぶんぬきの他、巡行中の屋台が出会った場合にも行われます。ぶんぬきを行う当事者たちはもちろん、見ている観客も巻き込んで盛り上がります。
麻布十番納涼まつりは、東京都港区麻布十番商店街で開催される祭りです。麻布十番納涼まつりは神社や信仰などに関する祭りではなく、麻布十番商店街が主催となる下町の祭りです。毎年数十万人が訪れるなど、規模の大きさも特徴です。かつては8月中旬に3日間開催されていましたが、ここ数年は震災による自粛などから8月下旬の2日間で開催されています。
麻布十番納涼まつりの大きな魅力は、出店の数。麻布十番商店街に店を構える老舗や名店が所せましと出店し、祭りならではのメニューを提供します。日本全国から自慢の特産品が集まった「おらがくに自慢」も開催されていて、食の祭りといっても過言ではない盛況ぶりです。特設ステージではライブや伝統芸能なども楽しめます。
石川県では、毎年7月と8月に多くのキリコ祭りが開催されます。七尾市で開催される石崎奉燈祭も、そうしたキリコ祭りのひとつです。キリコは巨大な切子燈籠のことで、正面には地区の願いが込められたキリコ吉祥文字が、背面には武者絵や風景画などのさまざまな絵が施されます。キリコ祭りではこうしたキリコが地域を巡行し、疫病退散などを祈願します。
石崎奉燈祭は、石川県で開催されるキリコ祭りの中でもひときわ迫力がある祭りとして知られています。その理由は、キリコの大きさ。キリコの大きさはそれぞれの祭りによっても異なり、車に取り付けないと運べないものもあります。石崎奉燈祭のキリコは人が担ぐキリコの中では最も大きく、その高さは15m、重さは約2tにもなります。太鼓や笛などのにぎやかな囃子に合わせて、巨大なキリコを担いで乱舞する姿は、荒々しくも幻想的な光景です。
福井県の永平寺町にある永平寺は、曹洞宗(そうとうしゅう)の大本山のひとつです。曹洞宗の開祖である道元によって開かれた寺院で、福井県を代表する観光スポットです。そんな永平寺の北に流れる九頭竜川で行われ、永平寺とも関係深い夏祭りが、永平寺大燈籠ながしです。
永平寺大燈籠ながしは、2021年度で34回目を迎えました。永平寺の役寮(やくりょう)・雲衲衆(うんのうしゅう)による法要が行われた後、先祖への想いや願いごとを託した燈籠を九頭竜川に流します。永平寺大燈籠ながしでは約10,000基の燈籠が流され、河川で行われる燈籠流しの中で日本一の規模だといわれています。夜の川を燈籠が流れていく様子はとても幻想的で、心が穏やかになります。クライマックスには、約1,000発の色とりどりの花火が打ち上げられます。燈籠流しの他、ステージイベントやコンサートなど催し物も行われます。
富山まつりは、富山県富山市の中心市街地で開催される夏祭りです。富山城址公園(とやまじょうしこうえん)、富山県民会館、城址大通りを中心とした地域で、毎年8月に3日間行われます。富山市の夏の風物詩といえる一大イベントで、夜遅くまで多くの市民でにぎわいます。
富山まつりのメインイベントのひとつに、「よさこいとやま」があります。よさこいとやまは高知県発祥のよさこい祭りをモデルとしたYOSAKOIイベントのひとつで、富山県内のYOSAKOIでは最も規模が大きいものです。毎年60組3,000人ほどが参加し、演舞やパレードを披露しています。
もうひとつのメインイベントは、オジサマーロックフェスです。2009年から開催されている素人オヤジバンドの野外バンドコンテストで、ゲスト審査員としてプロのロックミュージシャンやシンガーソングライターが招かれます。ゲストによるミニライブも開催され、大いに盛り上がります。
この他、越中おわら踊り街流しや越中おわら節全国大会なども開催されます。
富山県からもうひとつ、越中おわら風の盆もおすすめです。越中おわら風の盆は、富山県富山市で開催される祭りです。毎年9月1日から3日までの3日間で開催され、20~30万人が訪れる富山県を代表する祭りとなっています。2006年には、とやまの文化財百選に選ばれました。
越中おわら風の盆の起源は300年以上前にさかのぼり、歌や踊りは少しずつ形を変えながら今に受け継がれています。町中の決まったコースを踊り歩く輪踊り・町流しの他、おわら演舞場での演舞会も開催されます。演舞会では、イスに座ってじっくりとおわら踊りを観賞できます。
越中おわら風の盆は本祭の他、8月20日から30日にかけて開催される前夜祭もあります。前夜祭は本祭ほど混雑しないので、ゆったりと楽しみたい方におすすめです。
全国で開催されるさまざまな夏祭り。それぞれで、コンセプトや楽しみ方は異なります。今回ご紹介したものを参考に、夏祭りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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